2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

今週のお題「秋のおいしいもの」

秋刀魚が歯を剥き出しにして笑った。それを見た母が息を吸いながら笑い、それを見た僕は自分の歯の白さを鏡で確認して悦に入った。 物干竿的な長さの刀を持った男が、待たされ続けていらいらしていた。松茸を目印に、午前四時に待ち合わせていたのだ。向こう…

今週のお題「秋を感じる瞬間」

「松任谷由美の「春よ来い」には秋を感じる」と言いながら松ぼっくりを拾い続けているのは、私の夫のKだった。Kと私は、松ぼっくり採集業を営んで10年になる。何を隠そう、この仕事を始めるまで、私は松ぼっくりが苦手だった。それは子供の頃に遡る。子供…

今週のお題「秋を感じる瞬間」

枯葉剤を大量に投入して擬似秋をつくる計画を立案したベトナム帰還兵のボビーは、ひとまず小金井公園をその標的に定め実行に移したのだった。 「真夏であるにもかかわらず、枯葉を見るとどうしても秋を感じてしまう」と公園に訪れた人々から口コミで噂が広が…

今週のお題「2010秋の計画」

秋はやっぱり何かをもしゃもしゃ食って生きていきたいよね、と感じたのは夏の終わりにさしかかって宿題がまだできていないため自殺未遂をやらかした我が弟だった。この弟は秋の代弁者として生まれてきたため、秋以外の季節は何もかもやる気がしないのだ。「…

今週のお題「2010秋の計画」

1 2 死ぬまで読書をし続けなければならないという呪いをかけられたおれは、呪いを解くため方々を駆けずり回った。「右腕にかけた思いと上腕二頭筋にかけた呪いと」と呟いていたのはおれに呪いをかけたとネットで噂されている魔術師だった。「貴様が俺に呪い…

括弧括弧してるよ、アンタ‥それを合図にプラスイオンとマイナスドライバーの戦いの火蓋が切って落とされた(それはまるで括弧と括弧の間に挟まれて死亡した弟の弔い合戦の態をなして天から多くの軍勢を従え、午後の紅茶は大いなる正午を迎えるまで洪水がチグ…

今週のお題「2010夏のふりかえり」

1 2 暑い日差しの中、妖怪しょくもつれんさが木の枝のような形をした二本の足を交互に回転させて、歩いていた。この妖怪は食物連鎖を体現しているため、生まれて来た途端に自分自身を食べ始めるのだ。しょくもつれんさは、「アッー食べ食べられてる!」と叫…

今週のお題「2010夏のふりかえり」

「また実験に失敗した」 と言って竜巻を避ける穴に入ろうとしたのはコバーン博士だった。 「一人で逃げないでください」 と、妻が後ろから博士の腕を掴んだ。 「いいかげんにしやがれこのクソ親父が」 娘のドロシーは、これから友達の家のホームパーティーに…

今週のお題「2010夏のふりかえり」

さて夏の中でもすぐれた美しい聖ヨハネ祭に、そのおばあさんが畑と牧場とを見わたしていますと、ひょっくり鳩が歌い始めました。声も美しくエス・キリスト、さては天国の歓喜をほめたたえて、重荷に苦しむものや、浮き世のつらさの限りをなめたものは、残ら…

今週のお題「あの人のブログが読みたい!」

「あの人のブログが読みたい!」そう言って駆けていったのはたかしだった。 たかしは皆のアイドルだった。だがその裏では、長距離走のときはアンカー、中間期末テストは常に学年一位のたかしを快く思っていない複数の男子による「たかしあの人化計画」が進行…