Inventionのための23のVariations

3

人間が家のドアノブに牙を剥きはじめた。
あけようとしてドアノブを握りつぶしてしまう人間が続出したのだ。
それはあたかも人間によるテロの様相を示していたという。
大家がなおそうとすると、自爆し、新たに入居した人間もまた牙を剥きはじめる。
「このままでは右手の意味がなくなってしまう」
そう考えた大家はみずからがドアノブを守っているあいだに入居者を通すという自己犠牲にでたのだった。
血まみれの大家を踏み越えて部屋に入り込む人間たち。
家の床が赤一色に染まる。
そのため家賃は下がり続け、大家は世界的な規模で減少していく一方だった。
「やはりドアノブは人間にははやすぎたか‥‥」
というのが有史以来人類を見守り続けてきた宇宙人のコメントだった。
人間はやむことなくドアノブを攻撃し続けた。
いつしか地球上のドアノブが破壊され、一切のドアが開けられなくなる日が来るだろう。
「愚かな‥‥自分で自分の首を絞めるとは‥‥」
というのが有史以来人類を見守り続けてきた宇宙人のコメントだった。