早くメシ食いたいー

昔、和田アキ子久本雅美がやっていた「新型TV」という番組に大平サブローが出ていた。
その番組で、彼は「横山やすしのモノマネをやっているとき、考えるよりも先に口が動いていることがある」みたいなことを喋っていた。また、たまに(プライベートでも)「やっさん」の様な行動をとってしまったり、占い師に「とり憑かれている」とか言われたらしい。実際に「憑依」されているとは考えにくいけれども、これを一種の「憑依現象」として見ると面白いのではないか。
この「憑依現象」を考えるにあたり、ひとまず、真似する対象が「横山やすし」だからそうなったのか、誰が対象であれモノマネを徹底するとそうなるのか、という二つの疑問が生じるだろう。
ここでは、とりあえず前者である、と考えてみよう。疲れている上に腹が減ってふらふらだからだ。
そもそも、本物の方の「やすきよ」の漫才自体、異様な速度で展開されていた(言うことは今の感覚から見るとあまり面白いとは思えないが、この速度で漫才ができるコンビは、未だにいないのではないか)。
恐らく本物の方も、「考えるよりも先に口が動く」という経験をしていたのではないかと推測できる。すると、じゃあそれは何故起きるのか、という疑問が、今度は生じる。
笑いにおいては、何かを演繹的に考えればギャグが思いつく、というものでないのは明らかである。それは突然訪れるような感覚があるし、「ベタなもの」(共同性)を活かすためには自動化されたことばや展開に「憑依」しなければならない。この種の「受動性」を考えることが、ひとつの起点になるだろう。あとは将棋の名人が論理的に「考える」よりも早く、直観で駒を動かすときがある様に、訓練による自動現象(というだけではないが)という側面も考えられる。思考と行動における「速度」のずれ、あるいは逆転をいかにして捉えるべきか。
笑いにおける受動性と能動性(しかし結局のところ、この二つは厳密には区別できない)?