神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」歌詞分析

Twitterで書いた「ロックンロールは鳴り止まないっ」の構造についての分析です。改稿せず、ツイートしたままの文章です。


さて神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」についてである。
歌詞→http://j-lyric.net/artist/a053810/l01f883.html
歌→https://youtu.be/NXT9rz8BErk


この曲の解釈で最も重要なのは、「君」という言葉が何を意味しているか、という点にある。
この歌ではサビで「君」が連呼されるが、J-popの文脈での「君」は自然に「異性」を意味するものとして受けとられる。この曲も最初聞いたときはそうであるように受け取られるが、実はそうではない。


ここで連呼される「君」とは、実は「過去の自分」のこと。そして同じようにロックに衝撃を受けた(受けるであろう)誰かを指している。この解釈は根拠がないことではなく、歌詞カードには書かれていないが、ボーカルの「の子」が「曲の最後」に語る一連の言葉が暗にそれを示している。


「そう、僕の中で、いつか十代のやつ、ロックンロール、下校帰りに聴けたらいいなと、僕は、ちょっと、思いました」


そのように聞いてみるとこの歌で妙に違和感として残っていた歌詞の部分がすっと一貫したものとして入ってくるのである。「君が、今すぐ、今、曲の意味分からずとも」。
つまり「君」が意味してしまうものを利用することで、この曲を発見することに「遅れ」をつくっている。


言うまでもなくそれは歌詞の冒頭、ビートルズセックス・ピストルズを借りたがよくわからず、下校帰りに聞いたら急に衝撃があった、という内容の詞を構造的に追体験させている。「今すぐ」とは、すでに時空を離れている「今すぐ」のことだったのだ。


そして「今すぐ」という言葉は、ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」の冒頭、ジョン・ライドンジョニー・ロットン)が叫ぶ「Right now」と、時空を超えて共鳴するだろう。


予め「君」への呼びかけが「過去」であり現在でもある、すなわち時空を離れていることが前提にあり、現在と過去が入れ子になっているような構造がある。だからこその「遠くで、近くで」「今すぐ」なのだ。


ちなみに神聖かまってちゃんの「の子」の名前の由来は、「男の子でも女の子でもない名前にしたかったから」。身体が男の人間が「君」と歌う時に前提されてしまうことに対する距離があることがこのことからもわかるのである〜


まあこういうこと書くの野暮なんだけどね。人が気づけばいいものを語っちゃってるわけだからね。


だからまあ素朴でもないがアイロニーでもない。そういう形でどうポジティブなものを提出するのか、っていう問題意識があるようにも思う。


最後に書くと。 「そう、僕の中で、いつか十代のやつ、ロックンロール、下校帰りに聴けたらいいなと、僕は、ちょっと、思いました」 という最後の台詞は、歌詞にもPVの字幕としても出てこない。それは意図的で、この曲を最後まで聞いた者が遡行的に「君」の意味を再発見するための仕掛けだから。