今週のお題「父親/父の日」

父の日を記念するため、撮影に挑んだ僕だったが、父は思いのほかすばしっこく、僕は難儀したのだった。
「お父さん、動かないでください」
と言ってはみたものの、父は自分を記念する記念すべき日のために有頂天になっていて、聞く耳を持たなかった。
興奮気味の父を何とか落ち着かせ一枚目を撮ったが、ぶれていないかが気になった。すこし離れた場所からもう一枚撮ったが、父が「あ、ごめん瞬きしちゃった」と言ったので(本当かどうか分からないが仕方が無い)三枚目をとることにした。「あ、またぶれたかも」と僕は言った。
「いいかげんにしなさい!」
と突然父が切れ、三段階にわたってこちらに近づいてきた。
「これが父の日にしか放てない父の必殺技だ」とかしゃべりながら。
「このままでは殴られる」と思い、僕は思わずシャッターを切ると、フラッシュが攻撃的に作用したらしく、「ギャー」と叫びながら残像を残して父は奥に飛んだ。
「これがお前の父の日のプレゼントだというのか‥」
と床に横たわって天井を見ながら父は呟いた。

Alvin Langdon Coburn
"Ezra Pound"