今週のお題「都会 or 田舎?」

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回線がこんがらがってしまいました。ぶーんぶーん。と地下鉄の子である彼は地下鉄の構内でゆっくりと頭を振りながらそう言った。
赤い酉年回線と、炎ジジイが一緒くたにされてる!とも言っていたような気がする。確か、そのとき彼は怒っていたのだ。
田舎に地下鉄を縦横無尽に張り巡らせる計画、『田園地下都市化計画』を地下鉄の乗客たちに吹聴する彼の勇姿は、まさしく地下鉄の申し子のそれだった。「何故かわからないが、彼を見ているとそんな気がする‥」そう言って涙ぐんだのは炎ジジイだった。もう年で涙腺が壊れやすくなっているのだ。
でもね、炎ジジイ、ある種の植物が土管から現れるのにだけは注意しなよ、と彼は田園地下計画を吹聴しながら声帯を使い分けてそう言った。きっと、地下鉄よりも更に深いチカチカ鉄には、そういう植物がいるから、とも彼は言っていた。

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メトロ模様の尻尾を振り乱して、重力に引っ張り込まれていったのはボンジュール小松だった。針金が常に彼の進行方向を妨げていたからだ。彼は一歩を踏み出そうとすると、顔の前に針金が現れる、そんな呪いを西の都にいる魔女からかけられてしまっていた。西の都の地下鉄にその魔女は潜んでいるといわれていた。突貫工事で地下鉄を拡張していったときに、不意をつかれた魔女はシールド・マシンに粉砕され、粉微塵になったのだ。
魔女の粉は、1グラム1万円で取り引きされることになったという。