今週のお題「マイ・ミュージック」


神のうちの一人がある日一発ギャグを思いついた。
「他の神にめちゃくちゃ言いたい‥」
と神は思ったが、こんなことを言っては神の威厳に関わってしまう。
神はひとり胸中にそのギャグをしまいこんだ。
ある日神々の宴会が催され、それぞれが隠し芸を披露しはじめた。
ある神が、物凄い速さでテーブルクロスを引っ張る芸を始めようとした。
ちなみにこの時テーブルに乗っていたのは人間達の世界だった。
「ハラハラするな」と神の一人が言った。
神がテーブルクロスを引いた。わずかな振動を残して、見事にそれは成功した。神々は喝采した。
だがこの時地上では大地震津波で多数の被害者が出ていた。
次々と神々は宴会芸を披露していった(その度に地上では戦争や災害が起こったのだった)。
とうとうギャグを思いついた神の番になったが、この神は何の芸も持っていなかった。
まわりの神々の視線が刺さり、微妙な空気が流れた。この神はそれに耐えられず、とうとう一発ギャグを言ってしまった。
「神は死んだ!」
そのとき、全ての神々は大笑いし、椅子をゆすぶった。神々は「たそがれ」て、亡びたのではない。あれは嘘だ!そうではない―彼らは笑いこけて死んだのだ。それにしても彼らは、めでたい、愉快な最後を遂げた!
次々と神々は死んでいった。
一人!ああ、人間よ、しかと聞け!
二人!深い真夜中は何を語る?
三人!私は眠りに眠り―
四人!深い夢から、今目がさめた。
五人!この世は深い、
六人!『昼』の考えていたよりもさらに深い、
七人!この世の嘆きは深い。
八人!しかしよろこびは―断腸の悲しみよりも深い。
九人!嘆きの声はいう、終わってくれ!と。
十人!しかし、すべてのよろこびは永遠を欲して止まぬ―、
十一人!深い深い、永遠を欲して止まぬ!
十二人!

こうしてギャグを言った神以外、神はみな死んだ。
その場に、一人残った神は呟いた。
「哄笑する者のこの冠、この薔薇の花の冠、私は自分でこの冠を自分の頭上に乗せた。私の兄弟たちよ、あなたがたにわたしはこの冠を投げ与える。嘆きは言う、『終わってくれ!』と。しかし、万物は鎖でつなぎ合わされ、糸で貫かれ、深く愛し合っているのだ。だから、嘆きに対しても言うがいい、『終わってくれ、しかしまた戻ってきてくれ!』と。耳のある者は聞くがよい!」と。
だが、彼は客席に向かって背中を向けてそう言ってしまった。彼の人気をねたむものの悪意により台本が書き換えられたのだ。