あれは昨日の事のような

あれは昨日の事のような、明日のことのような気がしてます。もう一回だけ、わたしは彼に愛されたかったんです。いえちがいます、愛されたりすることはこの際なんら問題ではないのです。でもわたしは彼の家に行きました。行った、ということはどういうことかというと、玄関のベルを押した、ということでもあるし、螺旋階段を昇っていった、ということでもあります。螺旋階段を昇っていると、自分が回っているのか、回されているのかわからなくなりました。メリーゴーラウンドに乗っているようなものですね、それとはちがいますか。螺旋階段は彼みたいなものですか。そこで私は玄関のベルを押しました。彼がでてきました。いつもみたいに勲章を胸にいっぱいぶらさげてました、でもその時彼は裸だったんです。貧弱な体の上で勲章だけがぴかぴか光ってました。わたしはその勲章を食べてみたいと思いました。でもそんなことをしたら頭がおかしいと思われてしまいます。なので彼にキスすることで我慢しようと思いました。だけど彼は拒みました。仕方がない、勲章を食べるしかほかに方法はない。私はそう思い、彼の胸に突き刺さった勲章をむしりとり、口に含みました。彼は何か言いましたがよく覚えてません。