Inventionのための23のVarietions

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「我々の世界などトランプと同じ、キングはひっくり返ってもやはりキングであるように、だれが勝者になったとしても変わるのは上か下かだけなのだ。だから革命など意味を為さない」
というのが大貧民の自説だった。
それは大貧民による革命の様相を呈していたという。
「それならば大貧民を反・富豪として、そして大富豪を反・貧民として定義しましょう。これによりお互いはお互いの鏡になり、自分たちではなにも意味しないことになります。したがって両者ともに存在しないことになるのです」
「しかしそれが正しければ平民はどうなります?反・平民という存在はなかなか考えがたい。大富豪か大貧民でしょうか?いや彼らはそうではないでしょう。すなわち中間項には鏡は存在しない‥‥」
「ならば実質的には存在しない反・平民を考えてみましょう。定義は全て否定形によって行われます。すなわち『反・平民は中流階級ではない‥‥』などです。もちろん『反・平民は反・富豪でも大富豪でも反・貧民でも大貧民でもない』という定義付けも可能でしょう」
「しかしそれでは何も意味しないのではないですか?」
「人は何も意味しないものを実体化させることができます。勿論あくまで概念のうえでの話ですが‥‥」
そこに『反・平民』がやってきた。
「いや、私は確固として存在している」
それは、仕事においても個人としても、多額の負債に追われている社長だった。
「わーい存在していたー」
「おめでとー」
「おめでとー」
みんなが一斉に拍手しはじめた。
それはオチに対する革命の様相を呈していたという。