Inventionのための23のVarietions

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北九州の子どもたちが、「九州は南にあるのに北がつくのはおかしい」と言って親たちを困らせはじめた。
しかもイントネーションを「き(ド)た(ド)き(ド)ゅ(ド)う(ド)し(ド)ゅ(ド)う(ド)」と全て同じ音程で発音しはじめたのだ。
それはまるで北九州の子どもたちによる革命の様相を呈していた。
いままで「北九州」に無自覚だった大人たちも、子どもたちの指摘によって覚醒したのだった。
「このままでは北九州が無くなってしまいます。早急に手を打たなければなりません。アッ!西郷隆盛!」
というのが大分県知事のコメントだった。
だが北九州がおかしい、という者はどんどん増えていき、ついには「北九州」という語を使う者は知事だけとなった。
彼の周りの半径1mが「北九州」の最後の領域として残っていた。
どうしても「北九州」に観光に行きたい人間は、知事に密着するツアーを組んだという‥‥