Inventionのための23のVarietions

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家の夫が念願のマイホームに火をつけはじめた。
「あなた!なにをやってるんですか!」
「信子…おれはな、この日のためにおまえと結婚し、こどもをもうけたのだ」
夫はこちらを振り返らずに、言った。
炎が赤く夫の頬を照らす。
「パパやめてー!」
まだ幼い娘は泣きながら夫にしがみついた。
それはあたかも夫によるテロの様相を示していたのだった。
「まだローンも残ってるのに…」
私は、燃えあがり、すぐに焦げた木材の墓場になるだろう、一日いただけのマイホームを見て、思わずそう口走った。