プリンス

プリンスの「サイン・オブ・ザ・タイムス」を聴く。プリンスの才能が最も発揮されるのは、実は「ファンク」な曲でもバラードでもなく、その中間の、早くもなく遅くもない(ミディアム・テンポ?)曲であるように思う。勿論ファンクにもバラードにもいい曲はあるけれども。
プリンスの歌では、「英語」のもつ、潜在的にリズミカルな音の響きと、そこにのせられるメロディーとが、引き離せないものになっている。勿論、優れたソングライティング能力を持つ人は皆そうだろうが、特に彼は両者の統合の仕方が相当に上手い。しかし、「ファンク」だと英語のリズムに引っ張られてやや単調になるときがあるし、バラードにおいてはメロディーのみでいこうとして失敗する場合が多い。
ミディアムテンポなトラックにおいては、彼の英語の「音」に対する鋭敏な感覚をぬいたら成り立たないような、単純なメロディーが、アドリブのように生み出されていく。「サインオブザタイムス」でも「Sign O` The Times」「Starfish And Coffee」「if I was your girlfriend」等がその成功例だろう。
彼のことばの響きとメロディーは,一昔前のアメリカの都市の「ポップな」風景を、否応無く連想させる。たとえ幻想に過ぎないとしても、プリンスの歌を聞いているとき、それらは魅力的なリアリティとして迫ってくる。アメリカン・ポップ・ナショナリズム?(って誰かが言った言葉だっけ?)