伝説の家庭料理

伝説の家庭料理「三重苦」は、味も匂いも形も食感も全てが一致しないという、我が家でしか作ることができない伝説の家庭料理だった。
「味はキムチなのに見た目はフランスパンで、食べるとぱりぱりしていてなんか魚臭い!」とその家に訪れたお客さんは「三重苦」を食べて驚くのだ。だが最初は面白がっているものの、次から次へと出されるバラバラ料理に、「だんだんこの三重苦と見た目が同じあの料理がどんな味だったかわからなくなってきた‥」と言って客はブルーになっていく。こうして客に気まずい沈黙を強いるのが、この家にとって最高のもてなしだったのだ。
ところで、そこの子供であるまさはるは通常の料理がほとんど食べられなかった。「三重苦以外の料理は、味も見た目も匂いも、全部バラバラじゃないか」というのがその理由だったという。


調理後の三重苦。