今週のお題「ゴールデンウィークの過ごし方」


「あの地平線の果てには自由が待っているんだ‥」少年はそう言って地平線の彼方へ向けて歩きだした。「この子がどうしてもサハラ砂漠に行くって聞かないから‥」と言ったのは少年の母親だった。「やっぱり暑さでおかしくなってるじゃない」と母は少年に言った。だが少年はその問いかけには一切答えず、「フリー‥アズ・ア・バード」とうわごとを呟くように歌っていた。「待て!これは幻覚か?車と日除けになるやつが突然ここに現れたが?」と言ったのは少年の父親だった。「しっかりしてください、あなた。その車で私たちはここに来たんじゃありませんか」と母親は答えた。「そうかな‥。いや、何かがおかしい様な気がする」「大体私にも見えてるわ」「だけど二人で同じ幻覚を見るということは極限状態だとよくあることらしいぞ」と父親は言った。「もう、どっちだっていいからあの子を止めてください」と母親は怒った。「いいじゃないか、男はな、一度くらいは無茶をやるもんなんだよ」と父は答えた。
少年が止まらないので両親は仕方なく彼の後をついていった。やがて、暑さでふらふらになりながらも地平線の果てまで辿り着くと、兵士が二人立っていた。
「ここから先は通せないよ」
と兵士の一人が言った。
「君たちの事はここについた当初から監視していたのだよ」
ともう一人の兵士が言った。
「パパ、こいつらをやっつけてよ」と少年は指を指して父に向って言った。
「何を言ってるんだ?だれもいないじゃないか」と父は答えた。
「それ以上動いたら撃つよ」と兵士は銃を構えていった。
「変な事言ってないで、もう、はやく車まで戻るわよ」と母親が少年の肩に手をかけた。
バスンバスン、という銃声が砂漠に響いた。


「おかしいな‥」と兵士は呟いた。
「彼らを背後から撮影したこの写真には何故か車と日除けになるやつが写っている」
garry winogrand
”1964”