今週のお題「イヌ好き?ネコ好き?それ以外?」アドリブ

 「猫喫茶」に犬を連れて突撃してきた猛者が現れた。彼は、「猫なんて嫌いなんじゃー」と言って猫を抱きしめ始めた。途端に目が赤くなり、全身を掻きはじめた。「見ろ、わしは猫アレルギーなんじゃ」と言って涙をぽろぽろこぼしはじめた。「このアレルギーさえなければ‥わしは猫が飼えるのに」アレルギーで泣いているのか、本当に悲しくて泣いているのか、わからなった。「だから僕は猫より犬の方が好きなのです!」と突然敬語になって彼はいった。「それは嘘だな」と喝破したのは猫喫茶の店長だった。「君は猫が本当は好きなのだが、自分の体質のために諦めざるを得ない‥だから犬の方が好きだと思うことで、自分をごまかそうとしているのだ」「何だと!?貴様に何がわかる!」と男は言った。「いいや、わかるさ」と店長は答えた。「なぜなら‥私も猫アレルギーだからだ!」彼の目は真っ赤だった。「この店にいると、もう目がかゆくてかゆくて‥咳は出るわ鼻水は出るわ。だが私は押さえきれない猫への愛情に気がつき、この店を開くことにしたのだ」と店長は言った。「店長‥ついていきます!」と男は泣きながら店長に抱きついた。その時だった、彼の飼っていた犬が外に飛び出し、車にはねられた。「愛犬が!」男は真っ青な顔になった。いくら猫の方が本当は好きでも、犬にも愛情がある。愛犬が車にはねられたので、男は急いで近くにある『犬猫病院』に犬を連れて行った。だが医者は診察を拒んだ。「何でですか!」と男は怒鳴った。「うちの病院では『犬猫』は受け付けているが、『犬』は受け付けていないのです」医者は淡々とした口調でそう言った。「『犬猫』なんていう動物はいないでしょうが!」と男は更に怒鳴った。医者はしばらく黙ってから口を開いた。
 「‥犬好きと猫好きの間で起こった論争を発端に、あの15年戦争になったことを貴方も知っているでしょう」と医者は言った。「ええ‥僕は『犬派』の兵士として従軍しましたから」男は暗い顔になっていった。「そんな悲劇を二度と起こさないために、国連は秘密裏に『犬猫』を開発したのですよ。更に言うと、後二十年で全ての犬と猫は地上から消え、『犬猫』にとって代わられます。今は秘密ですが、そのうちCMでもやりますよ、草薙剛が使われる予定でね。」と医者は言った。「そんな‥そんなことは許されない!」と彼は言った。「何故ですか?猫好きなら『犬猫』も好きになれるし、犬好きの場合も然りでしょう」と医者は訪ねてきた。彼は言葉に詰まった。「とにかく、僕の犬を治してください!」と男は言った。「犬猫しか扱っていないといっているでしょう」と医者はやれやれといった口調でそう言った。「その犬を犬猫にする手術ならできますがね」と医者は言った。「そうすれば一命は取り留めるでしょう」
 「だがそのためには猫の遺伝子‥若干の血が必要です」「猫の血ですと‥そんなものはないぞ」と彼は言った。「うちの猫たちを使いたまえ!」と店長が急に押しかけてきて言った。彼の足元には、猫が二十匹ほど勢ぞろいしていた。「店長‥」「犬でも猫でも犬猫でも、そいつはそいつだろう?」と店長は言った。「店長‥ついていきます!」と男は泣きながら店長に抱きついた。
 こうして犬は犬猫として新たな生を受けることになったのだ。「全く、あの時はパニック状態だったよ」と男は自室のリビングで犬猫を撫でた。TVでは草薙剛が「2030年から、犬と猫は『犬猫』に変わります」と喋っていた。