Inventionのための23のVarietions

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黒駅員、という存在を知っているものは少ない(なにしろ駅長でさえ知らなかったりするのだから、それも仕方ない話かもしれないのだが)。
この黒駅員は、ホームで電車を待つ乗客に、飛び込み自殺をさせる。
主に中央線に常勤していて、黒駅員は標的をえらぶのだ。
ある日黒駅員の一人がリストラされた。
「勤続30年、その間人々を飛び込ませてきた私の苦労は一体なんだったのだ!」
黒駅員はJR東日本に復讐を誓ったという。
翌日から、中央線のノーマル駅員たちが次々と電車に飛び込み始めた。
「このままでは駅員の意味がなくなってしまう」
そう考えたJR東日本は白駅員を大量に中央線に配属した。白駅員は自らの命とひきかえに飛び込んだ者を蘇生させることが可能だった。
血まみれの駅員を生き返らせばたばたと死んでいく白駅員たち。
線路の上が赤一色に染まる。
そのため革マル派が疑われ、警察に濡れ衣をきさせられた。
「こんなに赤くするのは彼ら以外に考えられない」
というのが警察庁長官のコメントだった。
しかしいくら革マル派を逮捕しても黒駅員はやむことなく駅員を攻撃し続けた。
いつしか線路の上に駅員たちの屍体がうずたかく積み上がり、その場所は『聖者の丘』と呼ばれるようになったという‥‥