サカナ洗濯機とぼくら

サカナ洗濯機とぼくらは、回転するのが趣味だった。
「回転オモシレー」
ぼくたちは、立ったまま、その場で何回も回転した。勿論回転しすぎると最後には吐くことになるが、それが意外と快感なのだ。
ふと、何かが地面に崩れ落ちる音がした。
「さ、サカナ洗濯機?」
サカナ洗濯機は地面に倒れ、キラキラ光る四角い口から泡を吹いていた。洗剤の匂いがあたりに立ち込める。
「いかん、サカナ洗濯機を海に返さねば!」
今まで無理して陸上でエラ呼吸していたのだ。
ぼくたちはサカナ洗濯機の手足(のような部分)をもって、海に放り投げた。
ゆらゆらと波が押し寄せては引いてゆく、母なる海。
しばらくすると海面が震動し、渦を巻き始めた。
「サカナ洗濯機は、これで好きなだけ回転することができるんだね…」
「ありがとう!サカナ洗濯機!」
ぼくたちはいっせいに回転した。ぐるぐるぐるぐる、いつまでも。
夕日が、砂浜を紅く染めていた。