帝国

tkayk2006-08-10

EMPIRE」という、Princeton Architectural Pressから出ている雑誌のような感じの本があって、
これから造るアーティストブックの参考のために買った。まあ買ったのはちょっと前だけど。(ちなみに買ったところはストライプハウスの地下にある「東京ランダムウォーク」という、青山ブックセンター系列の洋書店)
デザイナーやアーティストが結集して(私はどの人も知らなかったけど)「アメリカ帝国主義」を批判するという内容のもので、レイアウトは参考になるものの、あまり面白くない。英語がたいして理解できない私でさえ見ただけでブッシュやラムズフェルドの「皮肉」「風刺」だということがわかってしまうようなやつ、「war is not answer」と真ん中に書かれた「花瓶-人の横顔」の、例のゲシュタルト心理学の図を応用(花瓶ではなくキノコ雲になっている)したやつなど、そんな何十年か前のプロバガンダの逆用ではブッシュ政権(というか「帝国」)には到底及ばない(まあ私もよくそういうことやってたけどね)。
そんな中でやや面白かったのがナポレオン(近代最初の皇帝?)の流されたセントヘレナ島が実は地下に広大な規模の基地を持っていた、みたいなことをスージー甘金みたいな漫画で描いたHenning Wagenbrethという人と、この本の表紙もやったMK Mabryとかいう人のデザインだろう。両者には「風刺」に回収されない「くだらなさ」と「気持ちの悪さ」があるからだ。こうしたテーマでの「笑い」はどうしても「風刺」「パロディ」といった言語的な意味に回収されてしまいがちな気がするが、それが笑いである限り、そこにはそうした「意味」とはまったく関係の無い「論理」(気持ちの悪さといってもいい)を持ち込まなくてはつまらない。
それが最低限の条件である。
さて、私はアーティストブックで「日常(ベタなもの)」をテーマにしそうなので、「風刺」からの回避とともにだいたひかるやら長井秀和やらの安易な「あるある」系の笑いからの回避も成さなければならない。どうしよう。

Henning Wagenbreth「the mystery of st.helena」