吉祥寺のA-thingsで境沢邦泰展。

http://www.a-things.com/index.html
完成作の単色に近い絵と、その過程の、筆触がキャンバス上にちらちら舞っている絵の展示。

過程の方の作品は、制作の段階のかなり最初の方のものを展示していて、完成作の塗りこめられた絵とはだいぶ違う印象である。制作途上の絵画は、白い布をモチーフにしているらしい。白い、まっさらなキャンバスに筆触だけを使い「絵画」足らしめることは相当難しく、なんらかのきっかけとしてモチーフが必要とされるのはよくわかる(「白い布」というのはその点いいモチーフだと思う)。キャンバスと筆触(色彩)との関係、筆触と筆触との関係に緊張感があって、とても洗練されているとは思うものの、全体的に色彩の彩度が低く、それ故にかなり安定したシステムになっている。私の趣味としてはもっと安定した色彩のシステム(彩度が低い色同士は綺麗に見える)をぶっ壊してほしかった(もっとも、完成作もグレー系の色なので、それとの関係性を暗に示していて、制作途上の作品としてはそれでいいのかもしれない)。

それにしても完成作により近い状態の絵が無いのは展示として勿体ないな、と思った。これでは制作途上の絵と完成作が「対立」している様に見えてしまい、妙に図式的な展示になってしまうからだ(そう思われるのは作家としても不本意ではないか?)完成に近い状態の作品があれば展示としてわかりやすいし、見る方としても、おそらく初期段階の筆触の安定性が崩れていると思われるので、一番見たいところである。

ギャラリーのオーナーの方も、そういう作品を展示したいとおっしゃっていたので、そのうちそれらが展示されると思う。